校長より


14代校長“予測不能”な時代に生きる力をつけるために

 

校 長  松 谷  卓 

 

 AIに代表される科学技術の急速な進歩に例を見るまでもなく、現代社会は急速な変化を遂げています。これからの社会を生きるためには、社会の変化に柔軟に対応して生きていくことが求められます。ではどのような将来像を描くことが正解でしょうか。2030年前までは“成功モデル”といったものが存在しました。しかし残念ながら、時代の変化が著しく、未来を“予測不能”な現在において、過去の“正解”や“成功”の中にはすでに通用しなくなっているものもあります。そのような時代だからこそ高校時代に着実な力をつけていくことが求められます。

 狭山経済高校は実社会を生きていくための即戦力となる商業的技術と幅広い教養を共に学べる学校です。高校において着実な基礎を学んでおけば、どのように時代が変化しても、身に着けた基礎力をもとに応用力で対応していくことができます。

 高校卒業後の進路選択は多様です。狭山経済高校は大学をはじめとする進学にも、企業や公務員といった就職にも対応できる学校として有為な人材を育てていくことに努めてまいります。

日誌

14代 校長通信

“アフター・コロナ”に求められる力

 5月14日、新型コロナウイルス対策で出されていた緊急事態宣言が39県で解除されました。徐々にではありますが、“アフター・コロナ”に向けて活動が再開されました。しかし本県をはじめ、まだ感染が収束に向かっていないとされる都府県が残っています。まだしばらくの間、気を緩めることなく過ごすことが必要です。

 この新型コロナウイルスの感染は社会構造に対して大きな影響を与えています。今まで“当たり前”と思われていたことが一気に瓦解し、私たちに新たな価値観の構築を求めています。こうした状況で生徒のみなさんに身に着けていってほしい力についてお話しさせていただきます。

 ひとつは「自分自身で課題を設定し、それを解決していこうとする力」です。“課題解決能力”ともいわれていますが、これはすでに20年前から言われてきたものです。いままでも様々な取組が行われてきましたが、この“感染症”という未曾有の状況において、この能力を伸ばしていくことがより重要になってきました。「正解がないと思われるものに対し、どのように課題を設定し、どのような方策を考えていくことができるか」ということに向き合える人はこれからの未来を切り開いていくうえで必要な人材です。進学するにせよ、就職するにせよ、こうしたことに向き合える人こそニーズが高まっていくことは間違いないでしょう。

 ふたつめは「自分の考えていることを的確に伝えることができる力」です。人は考えていることの1割程度しか他の人に伝えることができないという説もあります。前述した“課題解決”にどう向き合っていくかということも他の人に的確に伝えられなければ、せっかくのアイデアも水泡に帰してしまいます。言葉だけでなくあらゆる手段を駆使して、相手に自分の考えをできる限り的確に伝えていく力が今後一層求められるでしょう。

 いままでの進路は学校の成績や部活動の実績といったことで評価されてきました。しかし今般の状況でその人の持つ能力や人間性で評価するという、より本質に迫った方策が大学や企業でとられていくと考えられます。こうした状況だからこそ、生徒のみなさんが前述した力を身に着けることに向き合っていただくことを願います。

 

今だからこそ歌いたい“We Are The World”

 みなさんは、「We Are The World」という曲を知っていますか?1985年にリリースされた曲ですが、副題に「U.S.A. for Africa」とあります。この曲は、当時飢餓と貧困が深刻となっていたアフリカを救う目的で、アメリカを代表するミュージシャン総勢45名が制作に加わったものです。作詞・作曲はマイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチーの共作、プロデュースはクインシー・ジョーンズとなっています。1980年代を代表するミュージシャンですが、みなさんも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。今でも「We Are The World」で検索すれば、YouTubeで見ることができます。ぜひ一度聞いてみてください。

 私なりにこの曲についての感想を書くとすると、多数の豪華な出演者であるにもかかわらず、誰ひとりとしてその集団の中に埋没せず、その個性を失わないでいることです。一人のアーティストがソロを取るのは2~3小節なのですが、その短い間に自分の実力を余すことなく歌い上げる姿に圧倒されます。参加したアーティストにとってこうした仲間と共演できたことが最高に幸せな瞬間だったのではないかと思います。

 ふたつめはこの時代におけるアメリカという国の懐の深さを感じられることです。1970年代に自信を失いかけたアメリカが徐々に自信を回復し、アーティストたちが世界に目を向けアフリカの子供たちを飢餓と貧困から救おうとしました。現在に生きるわたしたちがこうした気概を持っているでしょうか。

 

 新型コロナウイルスが全世界で感染を拡大しています。多くの犠牲者が出ています。まさに世界が危機的な状況です。今こそ「We Are The World」の気概を私たち一人ひとりが持ち人類の危機に立ち向かっていきたいと考えます。

第33期卒業生のみなさんへ

第33期卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。近隣市町で新型コロナウイルス感染者が確認されたという報道が卒業式前日の3月10日の夜半にあり、翌11日の卒業式の実施について危惧されましたが、なんとか卒業式を挙行することができ学校としても安堵しています。

 

 現在の状況は明らかに“平時”ではなく“有事”です。全世界が新型コロナウイルスの感染拡大の防止と戦っています。こうした状況で私が思い起こすのは、日本にとって20世紀最大の“有事”であった太平洋戦争後に撮影された1枚の写真です。それはアメリカ軍による東京空襲で焼け野原となった街中で、撮影者に向かって笑顔を見せているひとりのおばあさんの写真です。おばあさんの傍らにはおそらくその方が住んでいるであろうバラックの家屋があります。そしてその家屋の周りは焼け焦げた材木などが散乱しています。その状況の中でもそのおばあさんは満面の笑みをたたえているのです。おばあさんの笑顔とならんで印象的だったのが晴れ渡っている東京の空です。おそらく米軍の兵士が撮ったであろう当時としては珍しいカラー写真なのでとても印象的な写真でした。私の中の戦中戦後のイメージは、どんよりした鉛色の雲に町一面覆われているというものでした。しかしよく考えてみれば社会がどのような状況であれ、晴れの日もあれば雨の日もある、それが当然なのです。おばあさんの笑顔と東京の晴れ渡った青空は、戦争が終わったという安堵感と戦後社会への希望を表しているように思いました。

 

 今日は3月12日卒業式の翌日です。狭山経済高校から見る空は、写真の空と同様、一面晴れ渡っています。新型コロナウイルスもやがて終息していくと思います。今の社会情勢に不安を覚える場面もあるでしょうが、状況を適切にそして冷静に判断し、卒業生のみなさんがこれから入学する学校や就職した会社等において、健康で充実した毎日を送られることを心から祈っています。